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A.ランゲ&ゾーネ(腕時計)の歴史や人気モデルについて解説します

2024.01.15

A.ランゲ&ゾーネはパテックフィリップやオーデマピゲ、ブレゲと並び、世界5大時計ブランドと言われる世界最高峰の時計ブランドです。

しかし、日本ではロレックスやオメガなどのブランドと比べると知名度が低く、本当の時計好きしかその存在を知りません。

ですが、そのまだあまり知られていない隠れた名ブランドこそ、「他の人と差をつけるにはもってこい」と考えている方も多いです。

ということで今回はA.ランゲ&ゾーネの歴史や人気モデルなどについて解説していきたいと思います。

有名なランゲ1やダトグラフ、サクソニアなどの定番モデルはもちろん、ダブルスプリットやグランド・コンプリケーションなど一般には知名度の低いモデルの特徴なども紹介しますので、A.ランゲ&ゾーネの魅力を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

ランゲ&ゾーネは、なぜ人気?どこの国のブランド?

A.ランゲ&ゾーネは、ドイツのグラスヒュッテで1845年に創業。

ドイツ時計の聖地として知られている現在、ドイツのグラスヒュッテの、その基礎を築き上げたブランドこそが、A.ランゲ&ゾーネだったりします。

A.ランゲ&ゾーネが創業された1840年は、グラスヒュッテ地区は貧困状態に陥っていて、とても貧しい人たちがたくさん住んでいる地域でもありました。

そんな状況を打破するべく立ち上がったのが、創業者の時計師アドルフ・ランゲです。

当時30歳に満たない時計師アドルフ・ランゲは、グラスヒュッテを統治するザクセン政府に新たな生業を確立する支援を訴えることで政府から承認が得られ、15人の若者を時計師として育成することを条件に、A.ランゲ&ゾーネを創業します。

1868年にはアドルフ・ランゲの息子である長男リヒャルトと次男エミールに工房が引き継がれますが、後に、パリの万国博覧会で「百年紀記念トゥールビヨン」の発表。

1902年には「グランド・コンプリケーションNo.42500」など、当時最も複雑なムーブメントを開発し、一躍世界の注目を集めました。

しかし第二次世界大戦の終戦前夜、A.ランゲ&ゾーネの本社は空襲の直撃を受けてしまい、本社が消滅。さらに終戦後は、当時社会主義国であった東ドイツに資産を没収されてしまい、グラスヒュッテ国営時計会社に統合される形で、A.ランゲ&ゾーネというブランドは消滅してしまいます。

ですが、1989年11月にベルリンの壁が崩壊したことで、ドイツの東西分裂が終焉し、創業者のひ孫であるウォルター・ランゲがA.ランゲ&ゾーネを復興させるために計画を立て始め、1990年、42年越しにA.ランゲ&ゾーネは復活を遂げました。

A.ランゲ&ゾーネの魅力

A.ランゲ&ゾーネはなぜここまで人気なのでしょうか。

考えられるのは、時計自体の人気が集まっていること、そしてブランドの知名度の上昇が挙げられます。

1つ目の時計自体の人気が集まっていることは、最近の傾向として時計の投資目的としての需要が多数あることも理由としてあります。

ロレックスをはじめとした有名ブランドが定価よりも高くなることが知られたことで、最高峰ブランド時計である資産価値を求める方からの需要が高まり、結果としてA.ランゲ&ゾーネの市場価値が高まったと言われています。

また、オーデマピゲのロイヤルオークやパテックフィリップのノーチラス、ロレックスのスポーツモデルなど、一部の時計が入手できない状態に陥っていることもA.ランゲ&ゾーネを後押ししました。

これらの理由から、オーデマピゲ、パテックフィリップに並ぶブランドでありながら、前者のブランドと比べると比較的手に入りやすいA.ランゲ&ゾーネの需要が高まるのは自然の流れと言えるでしょう。

A.ランゲ&ゾーネの特徴について

A.ランゲ&ゾーネの特徴は大きく2つあります。

それは創業時から「完璧な時計」を追い求めている完全マニュファクチュールへのこだわりです。

1つ目は、創業時から貫かれている「完璧な時計」を追い求める姿勢で、機械での大量生産が中心になっているブランドが多い中、A.ランゲ&ゾーネは現在も手作業にこだわっています。

それは、創業者のアドルフ・ランゲの「機能性に優れた時計を製作する」というブランドの理念を体現した体制とも言えます。

それは表面の時計デザインはもちろん、ムーブメントに施される美しいエングレービング装飾にも現れています。

エングレービングとは、銅版画で用いられる凹版技法のひとつで、A.ランゲ&ゾーネでは熟練の彫金師によるエングレービングを一つ一つのムーブメントに施しています。

2つ目は、完全マニュファクチュールへのこだわりです。

マニュファクチュールとは、部品の製造や設計、組み立てまですべて自社で行う時計ブランドのこと。
そのこだわり抜いた製造工程を1994年の復興モデルから現在に至るまで続けています。

とくに製造が難しいと言われている時計の精度を司るヒゲゼンマイも自社で製造を行っており、こういった妥協しない時計作りへの姿勢は、多くの時計愛好家の心を掴んでいると言われています。

ちなみに、多くの有名時計ブランドも部品の製造やムーブメントの製造、組み立てなどは外部の専門企業に依頼するブランドがほとんどで、そういったブランドのことをエタブリスールと呼びます。

A.ランゲ&ゾーネの市場価格が高まっている理由

A.ランゲ&ゾーネが高い理由は、特徴で述べた「完璧な時計」作りを行っているからです。

最高峰の時計製造のためには、部品作りやムーブメント、細かな装飾など、一つ一つに莫大な時間と労力がかかります。
そのため、他のブランドでは機械で大量生産することで、原価を安く抑えています。

しかし、A.ランゲ&ゾーネは職人の手作業によるこだわりがあるため、製造できる時計の数は限られており、必然的に1つにかかる労力や高価な素材、複雑で高精度なムーブメント作りを実現するには、時計の値段が高くなっています。

また、A.ランゲ&ゾーネは、1つのモデルに1つのムーブメントを作っています。当たり前に思われるかもしれませんが、ほとんどのブランドはモデルが違っても同じムーブメントを使っています。

これは同じムーブメントであれば、作る工程や作業が効率化され、より低価格で製造できるからです。
しかし、A.ランゲ&ゾーネは価格や効率を度外視してでも、「完璧な時計」のために、モデルごとに別々のムーブメントを作っているのです。

A.ランゲ&ゾーネのラインナップと特徴について

A.ランゲ&ゾーネのラインナップとそれぞれの特徴について紹介します。

ランゲ1

ランゲ1は、1994年のブランド復興モデルの第一弾として登場したモデル。A.ランゲ&ゾーネを代表するモデルとして、現在でも高い人気を誇っています。

誕生から20年以上経っているにも関わらずデザインはほとんど変わっておらず、登場時からすでに完成されたデザインであることがわかります。

ランゲ1の大きな特徴は文字盤のデザインで、オフセンターに配置された時刻表示にスモールセコンドやパワーリザーブ表示を納めた独創的なデザインは、黄金比率を採用しています。

また創業者のアドルフ・ランゲが開発した4分の3プレートのムーブメントや、彫金を施したテンプ受けなど、伝統的なスタイルを取り入れています。

サクソニア

サクソニアは1994年のブランド復興第一弾として登場したランゲ1と並んで知名度の高いモデルの一つで、モデル名は、A.ランゲ&ゾーネのルーツであるザクセン州を意味しています。

サクソニアの特徴は、極限まで削ぎ落としたシンプルなデザインで、バーインデックスのシンプルなデザインと、ゴールドとプラチナ素材が映える見事なドレスウォッチだと言われています。

また、アニュアルカレンダーや、デュアルタイムモデルなどの機能が充実した種類もありますが、王道のドレスウォッチを求める方には、6時位置にスモールセコンドを配置した定番モデルがおすすめです。

サクソニア アウトサイズデイト

サクソニア アウトサイズデイトは、2018年に登場したモデルです。

サクソニア アウトサイズデイトの特徴は、12時位置に配置された大きなデイト表示で、シンプルで王道なドレスウォッチであるサクソニアに、ブランドアイコンでもあるアウトサイズデイトを加え、インパクトのあるデザインになっています。

シンプルでありながら、印象的なドレスウォッチを求める方にぴったりの時計と言えます。

1815

1815は1995年に登場した、創業者のアドルフ・ランゲの誕生年を名前に冠したモデルの腕時計です。

1815の特徴は、アラビア数字のインデックスを採用している点。鉄道のレールをイメージした文字盤の外周デザインやブルーの針は、アドルフ・ランゲが好んで採用していたデザインとなっています。

復興モデル第一弾として登場したランゲ1やサクソニアがシンプル、または印象的なデザインだったため、1815はシンプルでオーソドックスなモデルとして認識されていました。

登場時は、2針にスモールセコンドのシンプルなデザインでしたが、現在ではクロノグラフや超複雑機構搭載モデルなど、幅を広げています。

ツァイトヴェルク

ツァイトヴェルクの特徴は、デジタル時刻表示を初めて機械式時計に搭載していること。2009年に登場と数あるコレクションの中では最近の登場ですが、数々の賞を受賞しており、登場時には大きな話題となりました。

先進的な機能とデザインで、シンプルなデザインが多いブランドの中でも、印象に残るモデルです。

リヒャルト・ランゲ

リヒャルト・ランゲの名前の由来は創業者のアドルフ・ランゲの長男、リヒャルト・ランゲから来ていると言われています。

彼は優秀な時計師だっただけでなく、当時の最新科学技術を時計開発に応用したことでも知られています。

リヒャルト・ランゲの特徴は、かつてA.ランゲ&ゾーネが製作した科学観測用デッキウォッチの伝統を受け継いでいることです。

文字盤にはローマンインデックスが配置され、クラシカルな印象が強いですが、裏側はシースルーバックになっており、美しいムーブメントを堪能できます。

オデュッセウス

2019年に発表された新しいモデルです。シンプルでクラシカルなデザインが多いA.ランゲ&ゾーネのなかでも、初のスポーツモデルとして登場し話題となりました。

オデュッセウスの特徴は、ステンレススチール素材であること。これまでゴールドやプラチナ素材のみの時計だったなか、ブランド初のステンレススチールを採用しています。

また、スポーツシーンでの着用を想定して作られており、新設計の耐震機能付きテンプを採用し、120m防水という高い防水性能も実現しています。アクティブに活動する方にピッタリのモデルです。

グランド・ランゲ1

グランド・ランゲ1は、インパクトのあるデザインが特徴のモデルで2012年に発表された、ランゲ1のサイズを2.5mmm大きくしたモデルとなっています。

ケースサイズは41mmと大きめですが、厚みは8.8mmという薄型を実現。また自社製のヒゲゼンマイを採用することで、高精度化を実現しています。

ランゲ1・デイマティック

ランゲ1・デイマティックの特徴は、ランゲ1初の自動巻時計として登場したことです。

文字盤をランゲ1とは鏡のように反対にデザインしており、ゼンマイの巻き上げを示すパワーリザーブ・インジケーターはレトログラード週表示に置き換わっています。

ランゲ1・ムーンフェイズ

ランゲ1・ムーンフェイズの特徴は、文字通りムーンフェイズを搭載していることです。

ムーンフェイズとは月の満ち引きを機械式時計で表す機構で、このモデルでは、「実際の昼夜の空を表現する」というコンセプトをもとに日中から夜間まで表現しています。

さらにこのムーンフェイズ表示の精度は99.9%を誇り、1日ずれるのに約122.6年かかります。ムーンフェイズ用の部品だけで70個以上が費やされている至極の時計です。

ダトグラフ・アップ/ダウン

ダトグラフは1999年に登場したモデルで、このモデルに6時方向のアップ/ダウンパワーリザーブ表示を配してリニューアルしたモデルが、ダトグラフ・アップ/ダウンです。

特徴は、世界最高峰のクロノグラフと称される高度な機能と、美しいデザインをバランスよく確保している点で、12時位置のアウトサイズデイトとサブダイアル、そして6時位置のパワーリザーブと雑然としてしまいそうな多機能さを端正に文字盤に表現しているのは、A.ランゲ&ゾーネならではの特徴と言えます。

ダブルスプリット

ダブルスプリットの特徴は、ダブルラトラパンテ機能を搭載する初めての機械式時計という点です。

ダブルスプリットは、経過したスプリットタイムの分秒を計測できる機能です。機械式時計で30分までのタイムの比較と、中間タイムの計測ができます。

ダトグラフのムーブメントをベースにしており、他のブランドよりもいち早くクロノグラフムーブメントの進化へと着手しました。

オリジナルモデルには、A.ランゲ&ゾーネの自社製ヒゲゼンマイが初めて採用されています。

トリプルスプリット

トリプルスプリットは、ダブルスプリットの製作を行った後に、開発されたモデルでダブルスプリットが経過したスプリットタイムの分秒を計測できるのに対し、トリプルスプリットは「時、分、秒」まで計測できるのが、大きな特徴です。

デジタル時計でのタイム計測の難易度は高くありませんが、機械式時計でそれを実現するのはとても困難なことです。

事実、A.ランゲ&ゾーネ以外に当時トリプルスプリットに着手したブランドはありませんでした。

2つの時間を最長12時間計測でき、6分の1秒単位という高精度を実現しています。

グランド・コンプリケーション

グランド・コンプリケーションの特徴は、A.ランゲ&ゾーネ史上もっとも複雑なコンプリケーション機構を備えていること。

フドロワイヤント(8/1秒計)つきダブルラトラパンテ・クロノグラフ、ムーンフェイズ表示、永久カレンダー、さらに美しい鐘の音で現在時刻を音声で案内するミニッツリピーターまで搭載しています。

ここまで多くの複雑機構を搭載しているにも関わらず、文字盤はスッキリとしており、あらゆる機構の駆動が一望できる優れたデザインだと言われています。

比較的購入しやすいモデルとオススメの型番について

A.ランゲ&ゾーネは近年、知名度が上がってきたこともあり、どのモデルも入手しづらくなっています。そこで、ここでは現在でも比較的入手しやすいモデルと型番について紹介します。

A.ランゲ&ゾーネのなかでも入手しやすいモデルは、サクソニアです。

ブランドのなかでも、もっともシンプルなデザインかつ復興第一弾として登場したモデルで、A.ランゲ&ゾーネを代表するモデルでもあります。

ブランドのなかでも、エントリーモデルとしても評価されており、A.ランゲ&ゾーネのなかでは比較的、低価格(それでも中古市場では百万円を超えます)です。

また、ランゲ1やオデュッセウスなどと比べると人気は落ち着いているため、入手しやすいモデルと言われています。

サクソニアのオススメの型番は、「380.032」です。

サクソニアのシンプルなデザインに、自動巻きムーブメントを搭載しています。

A.ランゲ&ゾーネに多くラインナップされている手巻き時計と違い、毎日ゼンマイを巻き上げる必要がありません。そのため、初めてA.ランゲ&ゾーネを購入する方にオススメです。

また、ケースサイズ38.5mmに対し、厚みが7.8mmと薄型であり、時計の着用感も心地よいのも魅力です。

まとめ

今回はA.ランゲ&ゾーネの歴史や人気モデルなどについて解説していきました。

高級腕時計については、まだまだ知っておきたいことがたくさんあります。

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