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2024.07.12
目次
世界的高級ファッションブランドである「イヴ・サンローラン」。
世間では「イヴ・サンローラン」として知られていますが、実は「サンローラン」と「イヴ・サンローラン」に分かれているんです。
しかし、ブランドが分かれていることや2つの違いを把握している人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、「サンローラン」と「イヴ・サンローラン」の違いを解説します。
また、取扱いアイテムやターゲット層の違い、ブランドの歴史についても深堀していきますのでぜひ参考にしてみてください。
「モードの帝王」と言われ、日本でも2023年に大回顧展が開かれたフランスの著名なファッションデザイナー、イヴ・サンローラン。
彼は日本でも知らない人はいないと言ってもいいくらい、歴史に名を残した偉大なデザイナーです。
イヴの名前が付いたブランドには、サンローランとイヴ・サンローランの2つがあります。
ここからは、2つのブランドの詳細や違いについて解説していくので、さっそく見ていきましょう。
「サンローラン・パリ(SAINT LAURENT PARIS)」はアパレルライン
サンローランは、もともと1962年にイヴ・サンローランが創立したブランドです。
後の2012年にブランド名が変更され、現在は「サンローラン・パリ(SAINT LAURENT PARIS)」という名称になっています(詳しくは後述の『「サンローラン」は正式名称では「サンローラン・パリ(SAINT LAURENT PARIS)」』で解説しています)。
サンローラン・パリは、アパレル(メンズ・ウィメンズウエア)を中心に、バッグ、革小物、アクセサリー、ジュエリーが揃うブランドです。
「イヴ・サンローラン・ボーテ(Yves Saint Laurent Beauté)」はコスメや香水ライン
一方イヴ・サンローランは現在、イヴ・サンローラン・ボーテ(Yves Saint Laurent Beauté)というメイクアップラインのブランドになっています。
パリ発祥のラグジュアリーブランド、イヴ・サンローランのボーテ(ビューティ)ラインとして1978年にスタートしました。
イヴ自身が、「私の創った服を着る女性に顔を与えたい」とボーテラインを発表したのが始まり。
以来、メイクアップやスキンケア製品などのコスメ、フレグランス(香水)を展開しています。
では、この2つのブランドのターゲット層を見ていきましょう。
サンローランは、DIOR HOMMEの人気デザイナーだったエディ・スリマンが、2012年クリエイティブ・ディレクターに就任しました。
それからは、ブランド創始者のイヴ・サンローランやそのアーカイブにリスペクトを示しつつ、エッジィでロックテイストを盛り込んだアイテムを追加してきています。
その結果、それまで馴染みの薄かった若年層にも人気を広げていきました。
これには、SNSが盛んになっていった時代背景も要因の一つとして考えられています。
とはいえサンローランは、高価格帯の商品がメインのラグジュアリーブランド。
そのため、ターゲットは大まかにいうとミドル層以上の、シックで洗練されたパリスタイルを好む人たちだといえるでしょう。
一方、イヴ・サンローラン(ボーテ)は、20~30代前半のジェネレーションZやミレニアル世代がターゲットです。
DEPACOが示しているイヴ・サンローラン・ボーテ事業部長の話では、実際の購買層も39歳以下で特に20~24歳の人が多いということです。
クチュールブランドとしての歴史を持ちつつも、自由で革新的なスピリットを併せ持つブランドの世界観が、この世代を魅了しているといえるでしょう。
では、両ブランドのデザイン性の違いはどのようなところにあるのでしょうか。
サンローランは、創業デザイナーであるイヴ・サンローランが作り上げた世界観がベースになっています。
気品があり、シックで洗練されたパリの雰囲気を背景にした高級感あふれるデザインが特徴です。
モードを基調としながらも、自由で独立した女性像を起点に斬新なイメージでデザインするサンローラン。
エディ・スリマンによって、よりエッジィでロックテイストな世界観が加えられています。
現在は、クリエィティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロがデザインを担当しています。
エディ同様、これまでのアーカイブにリスペクトを示しつつ、セクシーで洗練された大人の女性が着こなすシックなデザインが特徴です。
一方イヴ・サンローラン(ボーテ)は、このようなサンローランの世界観やスピリットを踏襲しています。
高級感を保ちつつも、ターゲット層のジェネレーションZやミレニアル世代にアプローチ。
明るいピンクやハートモチーフがデザインに盛り込まれ、より若々しい印象です。
イヴ・サンローランとサンローランの歴史について
これまでは、両ブランドの違いについて触れてきました。
ここからは、改めてブランドの成り立ちや歴史についても見ていきましょう。
ブランドはもともと「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」として、デザイナーのイヴ本人によって1962年オートクチュール(高級仕立服)ブランドとして創設されました。
そして1966年に、プレタポルテ(高級既成服)ブランド「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ(Yves Saint Laurent Rive Gauche)」が立ち上げられています。
いずれも、アパレル(ウエア)がメインのブランドです。
・男性用のタキシードを女性向けにアレンジした「スモーキング タキシード」
・アフリカの狩猟旅行に出かける際のスタイルからヒントを得た「サファリルック」
など、当時の模範的な女性像を覆す革新的なデザインは世間の注目の的となり、イヴ・サンローランを一躍人気ブランドへと押し上げました。
イヴ・サンローラン・ボーテとサンローランのブランドが分かれた理由
1964年、初の女性用フレグランス「イグレック」(イヴのイニシャル「Y」のフランス語読み)を発表しました。
これを皮切りに1978年、イヴはアパレルにとどまらず「私の創った服を着る女性に顔を与えたい」と初のボーテラインを発表します。
このような理由から、イヴ・サンローラン・ボーテとサンローランは分かれました。
「サンローラン」は、正式名称では「サンローラン・パリ(SAINT LAURENT PARIS)」
イヴ本人が引退を表明した2002年、オートクチュール部門も彼の引退と同時にクローズします。
しかしプレタポルテ部門はその後も存続し、その後何人かのデザイナーに引き継がれてきました。
その中でも、イヴ他界後の2012年にクリエイティブ・ディレクターに就任したエディ・スリマンは、このブランドに大いに貢献しています。
彼はイヴ本人のスピリットや世界観、アーカイブにリスペクトを表しつつも、メンズのみならずウィメンズ、キャンペーンヴィジュアル、ストアデザインなど全てを大胆に改革しました。
ブランド名の変更も、この「サンローラン・リフォームプロジェクト」と銘打たれた厳しく大きな刷新のうちの一つだったのです。
こうしてサンローランは、ブランド名から「イヴ」を外し、「サンローラン パリ(SAINT LAURENT PARIS)」へと変貌を遂げます。
長い歴史を脈々と受け継ぎながらも変遷を重ねて現在に至り、アパレルにとどまることなく、ビューティラインでも若い世代を魅了し続けています。
幅広い世代に受け入れられる存在として、サンローラン・パリ、イヴ・サンローラン・ボーテはともに現在も世界中で多くの人々に愛されているのです。
今回は、サンローランとイヴ・サンローランの違いについてお話してきました。
世界的にも著名なイヴ・サンローラン氏の歴史やブランド名の変遷を、深く知る機会になったのではないでしょうか。
アパレルウエアがメインのサンローラン・パリ、そしてコスメを主とするイヴ・サンローラン・ボーテ。
クチュールブランドとしてスタートし、イヴ本人の引退後はプレタポルテブランドとして存続しています。
現在も彼の作り上げた世界観はそのままに、大人の洗練されたシックなスタイルを発表し続けるのがサンローラン・パリです。
その世界観を踏襲しつつも常識にとらわれない独立した女性像のイメージで、イヴ・サンローラン・ボーテもジェネレーションZやミレニアルの若い世代を魅了しています。
また最近では、男性やジェンダーレスな層にも人気が広がっています。
ふと手に取った商品に歴史から受け継がれた世界観が感じられると、いつものお買い物もまた少し違ったものになるかもしれません。
今回の記事を読んで、新たな目線でファッションやお買い物を楽しんでみてください。